誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承 ─ ポジショニングで食べる喜びを伝えるPOTTプログラム ─

代表メッセージ

POTT研究会代表 日本赤十字広島看護大学 迫田綾子
コロナ禍で、やっと開催できた研修会
(中央が筆者)

 POTTとは、“ポジショニングで(PO)、食べるよろこびを(T)伝える(T)プログラム”の略称で、技術と教育方法で構成しています。約10年前から看護師を中心に研究、教育、実践を重ねて開発した臨床知です。プログラムの開発中はPOTT研究会と称していましたが、2018年2月より「POTTプロジェクト」として発足させました。POTTプログラムの伝承や研究、教育、ケア用品開発等を組織的に進めることを目標としております。
 心地良いポジショニング(姿勢調整)は、食欲を促し誤嚥を予防するなどの、“食べるよろこび”を共有することにつながります。POTTプロジェクトでは、そのスキルを全国の看護や介護職へ伝承・定着する活動を継続し、2020年初旬には31都道府県まで拡がりました。全国を8ブロックに分けてリーダーを配置、それぞれに工夫しながら活動をしています。2019年には、POTT用バスタオル開発のクラウドファンディングにもチャレンジし、その支援資金を基に未伝承県や高齢者地域に「食べる喜び」を伝承する計画でした。
 しかしながら2020年2月、新型コロナウイルス感染症((COVID-19)が拡大し、日本中が対応に追われる事態が発生しました。食事は3密を避け、飛沫感染や接触感染予防を取った上でのセルフケアや援助が必要になりました。関連学会ではガイドライン等が出されたものの、現場では戸惑いが拡がりました。
 食事時のポジショニングは、感染の有無に関わらず常に病む人の安全や安楽、不利益が生じない倫理的配慮と実践が求められます。コロナ感染禍の中でPOTTプロジェクトは何ができるのかを模索しつつ、次のような新たな活動を始めました。

第一は、新型コロナウイルス感染症流行期における「食事時のポジショニング基本スキル」を作成し、公開(ホームページよりダウンロード可)。
第2は、オンライン学習会を開催。Zoom等を使用し、3か月に1回程度ポジショニングの基礎知識を理事が講師となり継続中。各地で活動している方々の報告もいただいています(新着情報参照ください)。また新たな形式の地域別オンラインセミナーも発足しました。
第3は、感染対策を取り入れたPOTT研修会の開催開始。7月から近隣地域での研修会を開始しました。カンファレンスや相談も受け付け中です。
第4は、医療用SMSなどのメディアを使い、会員への情報提供などをしています。
第5は、特許庁に「POTT」の文字商標登録中です。
第6は、ポジショニング用品の開発。車いすの座面シートや足台などを試作中です。

 POTTプロジェクトは、摂食嚥下ケアを担う全ての人に対し、食事時の基本的ケアであるポジショニング技術を伝承し定着することで、食べるよろこびを支え合い、互いの人生をよくすることが願いです。究極は、ケアリングと相互成長です。まだまだPOTTは認知度が低く、種まきの段階です。種から芽を出し花咲くことを目標に、Withコロナが続く中でもPOTTプログラムを伝承し、量から質へと深化させていきたいと考えています。引き続きご協力とご支援の程お願い申し上げます。

2021年1月吉日
POTTプロジェクト代表(日本赤十字広島看護大学名誉教授)
迫 田 綾 子

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