POTTプログラム
車椅子のポジショニング
食事援助する場合は、まず車椅子の構造や座面のクッション素材の特徴等を把握し、楽に食事姿勢が取れるように調整する必要があります。食事姿勢を整えることは、誤嚥や褥瘡を予防することに繋がります。頭部を安定させ、肘、体幹、膝、足底のアライメントを整えます。
座位姿勢は、自力で座位が可能(端座位)な状態を原則としますが、介助で座位が可能(一部介助)な場合もあります。端座位が可能な場合は、体幹が安定していることの目安になります。しかし、端座位ができなければ体幹が不安定な状態と言えます。但し、端座位が可能だからと言って、座位が安定している訳ではありません。端座位が可能でも、食事を自力で行う場合には、食事動作、咀嚼、飲み込み、座位姿勢バランス、体力が必要になりますので、端座位が可能であっても、食事に必要な身体の動きや活動が必要になるので、自力で食べられない方も多いのです。端座位が困難でも、一部介助で座れる場合は、車いすでの座位なら可能と考えますが、全身状態(血圧、覚醒、呼吸、Spo2、痛みなど)や疲労、体力(持久性)の問題を考慮して進めて行きます。
食事場面では、医療機関でよく使用されている標準型の車いすは、欧米では移動用(備品用)と言われています。最近では、調整可能な車いす(調整型車いす、モジュラー型車いすという)が多くなりつつあります。対象者に合せて良い姿勢を作る事が可能ですが、標準型車いすは、調整が足台の高さしかできませんが、ある程度の工夫をすることで、座位姿勢が良くなります。
食事の際は、対象者の身体寸法に合わせることが必要です。座面や背もたれのたわみ補正や、足底接地を行ってから食事を開始します。
状態が安定し、座位への耐久性が確保された場合には、車いすに移乗し車いす座位での食事を進めます。車いすでの食事姿勢としては、いわゆる椅子座位(股関節屈曲90度、膝関節屈曲90程度)とし、足関節は底背屈0度程度で足底が床にしっかりと接地しているか、車いすの足台にしっかりと乗せられているかが重要となります。また、座面(シートやクッション)と大腿部がしっかり接触していること、身体が背もたれに十分接触している事、腕(肘・前腕)がしっかり肘かけで支えられていることが必要となります。
また、車いすの姿勢調整だけでなく、移乗する時にも注意が必要です。
ベッドなどから車いすに移乗した際に気をつけることは、座面中央に座っているか、座面の奥まで座っているかを確認します。座面の奥までや座面の中央に座っていないと、傾いた姿勢や前滑りの姿勢になりやすく、体幹や頭頸部のポジションが不良となり、食物の取り込みや咀嚼・嚥下が困難であり、ひいては誤嚥を招く恐れがあるので注意が必要です。
その他、車いすに座っていて頭部や体幹が保持出来ているかも重要です。車いすに座っていて頭部や体幹が保持できていない状態では、食べる事が難しくなりますし、流延や誤嚥を生じることになります。その場合には、普通の車いすではなく、リクライニングやティルト・リクライニング機構のある姿勢変換型車いすが適応となります。車いすに座っていて姿勢が崩れるような対象者では、座面や背もたれなどにズレが生じるため、予め褥瘡予防対応が可能な車いすクッションを利用するべきです。
車いすの食事の目安は、およそ30分以上保持できることが必要となります。食事量や食事の自立度によっては食事時間が長くなること、疲労発生、覚醒の低下や血圧変動、呼吸状態の変動(呼吸切迫、頻呼吸等)、痛みなどを考慮して、車いすでの食事が可能かどうかも判断します。なお、車いすでの食事時間は、上記の事を踏まえた上で、1時間程度以内を基本としています。
また、車いすでの食事時間の設定は、食事回数が一般的に3食(朝,昼,晩)となっていますが、問題となるのは、食事時以外の座位活動時間の把握が重要となります。食事以外の時に座位活動時間が長いと、肝心な食事の時に疲労や状態変化が生じてしまうことです。ですので、車いすで離床するのは良いことなのですが、疲労などで食事が取れなくなっては本末転倒ということになりかねませんので、食事時以外の座位時間の把握が必要です。
以下の表は、車いすの座位姿勢が不良になってしまう要因です。車いすの座位姿勢は、対象者の心身機能が原因となっている事もありますが、その大半は車いすなどの環境的な要因が原因となっていることや、アセスメント不足の問題が大きいです。対象者に対するアセスメントは、全身状態は当然のこと、服薬状況やケア要因、車いすなどの環境的な要因についてのアセスメントを行なっていく必要があります。
*当資料等を元に車いすポジショニングスキルチェック表を作成しています。
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